NPO法人仕事への架け橋が主催する、高等専修学校生や高校生の「仕事力」と「文章力」を
競う第19回『私のしごと』作文コンクールの最終審査が、9月27日:アルカディア市ヶ谷で
行われました。全国から2565編の作品が寄せられ、最高賞である文部科学大臣賞には、
安城生活福祉高等専修学校2年の山本悠真君が選ばれました。なお、優秀団体賞として愛知県からは、
安城生活福祉高等専修学校、菊武ビジネス専門学校、専修学校さつき調理・福祉学院の3校が
選ばれています。
テーマ:好きな仕事で、夢をかなえる
過去の経験を将来の仕事に
安城生活福祉高等専修学校
山本 悠真
「誰か助けて」。
学校の帰り道、思わず声に出したことがあった。
僕は小学3年生の頃から、友達にからかわれたり、避けられたり、遊び半分で
物を取られたりしたことがあった。このいじめは何で始まったのか、何故僕
だったのかはわからない。でも、この出来事で僕の楽しい学校生活は一変した。
朝になると、学校に行かなければならないと考えるだけで腹痛や頭痛に苦しむ
ようになった。しかし、この頃の僕は小学生なりに、母に心配をかけたくなく
て、それを言うことは出来なかった。そのせいで、誰にも助けを求められず、
心の叫びを声に出してしまったのである。
小学4年生になり、クラス替えもあり、少しいじめも落ち着いてきたある時、
ふざけて遊んでいた友達がぶつかった黒板が倒れ、僕の頭を直撃した。それを
見ていたクラスメイトが心配してくれたのである。3年生の頃から心を閉ざし、
誰も信じられないと思っていた僕にとって、心配してくれることが信じられず、
どうしていいのか分からなかった。
中学生になり、小学生の頃の出来事を忘れかけていた。ある日学校から帰る
途中、友達にからかわれている子を見かけた。その時、小学生の頃の記憶が鮮
明に蘇ってきた。僕は思わずその子に駆け寄り、「大丈夫?何でも言って」と話
しかけていた。その子はびっくりした様子で「ありがとう。大丈夫」と答えて
くれた。僕の一言で、その子が少し救われたかもしれないと思うと嬉しかった。
そして、僕の時にも誰か優しい言葉をかけてくれる人が一人でもいたら、どん
なに救われたことだろうと思った。
僕は過去に傷がある。高校を受験する時に何が自分に向いているのかと悩ん
でいた僕に、信頼している方から「悠馬君は、そういう過去があるからこそ、
人にやさしく出来る仕事が向いているよ。だって考えてみな。人にちょっとし
た手助けをしてあげてお礼を言われると嬉しいでしょう。それが生涯の仕事に
なったら最高だと思わない?」とアドバイスされた。はじめは、人に優しく出
来る自信などなく、疑心暗鬼だった。しかしそれから、地域のボランティアな
どに積極的に参加し、自分が本当に人を手助けする仕事が向いているのかを真
剣に考えるようになった。
ある日、ボランティアで介護施設での手伝いを体験した。お年寄りと楽しく
話しをしたり、少し介助の手伝いをさせてもらった。その際、ある一人のお年寄
りに「本当にありがとう。助かったよ」と笑顔で言ってもらった。初めての介護施設での
ボランティアで疲れていた僕にとって、この一言はとても嬉しく、
疲れが一瞬で吹き飛ぶ気がした。そして、ふとこれを仕事にできたら充実した
毎日が送ることできるのではないかと思った。
高等専修学校に入学し、2年生になった。今は、介護福祉士を目指し、勉強し
ている。自分の希望している仕事を目指しているが、決して楽しいことばかり
ではない。実際に介護施設で仕事を経験させていただき、現実の厳しさを知っ
た。しかし、僕の過去の出来事を生かせる仕事、また人に感謝された時の充実
感を実感できるこの仕事を生涯の仕事にしたい。この僕の気持ちを大切にしたい
と思っている。
僕は今、学校で授業後の実務や、週末のボランティア、長期休暇中の実習な
ど、毎日忙しく過ごしている。過去の経験があり、今の僕がいることを感じて
いる。